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ある天文学者の恋文 [映画]

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■2016/9/24鑑賞@チネチッタ。今年103本目の洋画54本目。

■これは、時折行く「TOHOシネマズららぽーと横浜」での予告編が面白そうだったので観ることにした。でも実際は近くでやってたのでチネチッタで。

■監督はジュぜッペ・トルナトーレ。『ニュー・シネマ・パラダイス』とか『鑑定士と顔のない依頼人』の監督さんです。そして劇伴が御大、エンリオ・モリオーネ。これは何かズルいよな。

■老境の天文学者の大学教授・エド(ジェレミー・アイアンズ)には、学生でありながらバイトでスタントをやっているエイミー(オルガ・キュレリンコ)という恋人がいた。エドには家庭があるので、まあ不倫である。エドは著名なので多忙な上、エイミーが在籍している大学では客員教授的な感じで本籍はエディンバラなのでなかなか会えないが、チャットやメールのやり取りやビデオレターでコミュニケーションを取っていた。

■エイミーはある時大学で別の教員からエドの訃報を聞くが、メールやビデオレターは相変わらず図ったタイミングで届き続ける。エドの死を確認したエイミーは、謎を解こうと思い、エドの住居・エディンバラを訪れる。

■メールやビデオレターのトリックは、ITの知識を多少持っている人ならば割合簡単に解ける。でもこの映画は映像美とモリオーネの劇伴、そしてオルガ・キュリレンコの演技でかなり魅力的な作品になってしまった。オルガと言えば『007/慰めの報酬』のボンドガールだったりするのだけど、別に好きなタイプの女優さんではない。けどこの映画に限っては絶賛。思い悩む姿とかが非常にいいです。

■そして死んでしまった恋人からメッセージが届き続けるのは、エドが天文学者ということもあって、遠い恒星から発された光が地球に届く時は放たれてから何万年も後、に例えている訳で恥ずかしくなるくらいロマンティックでもある。

■結構日本人受けしそうな話なので、日本版でリメイクして欲しいところ。エイミーの通う大学を東京にして、エドの本拠地を長野とか仙台とかにして。ま、この映画は日本では小規模公開なのでちと難しいかとは思うけど。

■割合好きな映画です。ただ、原題の『Correspondence』(通信、などの意味)が何でこんな邦題になるのか。日本の配給会社は観客をバカにし過ぎてると思う。邦題で媚びへつらっても、この手の映画を観に来る層は限られてるんだから。

ハドソン川の奇跡 [映画]

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■2016/9/24鑑賞@109シネマズ川崎IMAXで鑑賞。今年102本目の洋画53本目。

■昔はそれほど熱心なファンではなかったのだけど、『ジャージー・ボーイズ』『アメリカン・スナイパー』と毎年傑作を連発されたら、そりゃ観ますよね。クリント・イーストウッド監督の新作。

■2009年に実際に起きた航空機のハドソン川不時着水事故と、その時の機長、チェズリー・サレンバーガーの手記をもとに作られた映画。原題『Sully』はサレンバーガー機長の愛称。この事件はそう遠くない過去の話なので覚えているが、日本側には美談的な側面しか伝わって来なかったような。ま、オレのアンテナが鈍いせいかもしれないけど。なので映画を観たらちょっと意外な感じだった。

■2009年1月15日、ニューヨークを飛び立ったUSエアウェイズ機は両エンジンにバードアタックを受け操縦不能になり、機長のサリー(トム・ハンクス)は管制塔からの近隣の空港への着陸指示を無理と判断し、ハドソン川への不時着水を試みる。結果成功し、乗客155名と乗員はすべて生還し、マスコミでは「ハドソン川の奇跡」と称えられる。しかし、連邦政府の事故調査委員会は、サリーと副長のジェフ(アーロン・エッカート)の責任を問うべく調べ始める。

■っていう話なんだけど、映画の冒頭は、事故後のサリーの「失敗してしまった場合の幻覚」で始まる。そこからサリーたちと、責任を問いたい事故調査委員会との戦いが始まる。合間に事故のときの映像が挟まれる。いや、イーストウッド監督、さすがに構成が上手です。

■この映画もあれこれ御託を並べるべき映画ではなく、観ていただくのが一番いいのだけど。まず、トム・ハンクスが力みが抜けた等身大の男を演じていて、最近のトム・ハンクス出演の映画では一番いい。そして、この手の映画では搭乗客を含めた群像劇になりがちなところを、「サリーの判断は正しかったか否か」というシングルイシューに絞ったのもいい結果につながったと思う。

■あと、こういう映画では当然CGは必須だし使われているけど、ハドソン川への着水シーンは、監督のこだわりらしく実際にエアバスをハドソン川に沈めて撮影したそうな。いったいどうやってやったかは気になるところだけど。

■おそらくこの事故を着想として作られたものに、3年前のデンゼル・ワシントン主演の『フライト』という映画もあるのだけど、こちらはパイロットがヤク中でアルコール飲んで搭乗しているのに、超人的な操縦テクを見せるところだけは一緒という、何とも不思議な映画でございました。それなりに面白かったけどね。

■これも観とくべき映画です。年末洋画ベスト5にまた困りそう。あと、『アメリカン・スナイパー』の時に何かの記事で読んだんだけど、イーストウッド監督は、予算とスケジュールを必ず枠内で抑えるのでプロデューサー受けがいいそうです。職人だなあ。

ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK ‐ The Touring Years [映画]

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■2016/9/22鑑賞@TOHOシネマズ川崎。今年101本目の洋画52本目。

■ビートルズの結成前夜から解散するまでのライブを含めた映像を再構成したドキュメンタリー。監督はこの手の映画にしては珍しい、巨匠ロン・ハワード。わたくしがビートルズに抱いていた印象は、昨年ポール・マッカートニーのライブに行った感想のエントリにたくさん書いてあるのでそちらをご参照ください。

■当時の映像の他に、おそらく新撮のポールとリンゴのインタビューと、アーカイブのジョンとジョージのインタビューも含めて、いや構成上手いな、というのが第一の感想。ビートルズがデビュー以降、殺人的なスケジュールで世界各国をライブで廻り、1966年以降はライブを停止したというのは知っていたけど、いざ観せられるとこれほどまでの殺人的なスケジュールとは思わなかったし、政治的な意見を述べると手のひらを返したようにファンもマスコミも冷淡になる、という状況は現在も同じですね。

■確かに、特にオレみたいな浅いビートルズファンは知らないこともたくさんあるので、近い世代の人は観ておいたほうが得な映画だと思います。ライブの映像、特に本編終了後の、シェイ・スタジアムでのライブを映像(4K)・音楽ともにリマスターした映像は凄かった。昔の同僚のマニア・Mさんは「『Twist and Shout』は別音源では?」と指摘してたけどさすがです。

■本編ももちろん面白かったんだけど、細かいところで笑えた。デビュー直後のインタビューで、ジョンの上に座ったリンゴがタバコの灰をジョンの頭に落としてるところとか、ポールが「『Help!』の撮影のときはほとんどみんなラリってたね」とかね。シェイ・スタジアムの観客席で映っていたティーンエイジのヤンキーガールは、今はどういうおばあちゃんになってるのかな、という妄想とか。

■66年の武道館の映像も収録されてるけど、長く扱われているのは日本公開版限定らしい。なので、世界公開版では浅井慎平のインタビューとかはカットされているんじゃないかな。それにしても来日当時に武道館での公演について、右翼の反対運動が起こっていたのは知らなかった。全部じゃないけどバカな右翼は、国益に寄与するつもりで結果的に反対の結果になっているのは、昔も今も同じである。

闇金ウシジマくん Part3 [映画]

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■2016/9/22鑑賞@TOHOシネマズ川崎。今年100本目の邦画49本目。複数回観たのを除き昨年は年間でちょうど100本だったのだが、今年はまだ9月も終わってないのにこの有様。ちょっと観すぎかなあ。

■真鍋昌平の同名原作漫画の映画化シリーズ。原作はつまみ読み程度なんだけど、映像化はすごく好きで、映画の『闇金ウシジマくん』『闇金ウシジマくん Part2』と、ドラマの『闇金ウシジマくん』シリーズは直近までやっていた『Season3』まで全部見ている。そして今作と、来月公開の『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』で映像化は一応完結するらしい。なお『Part3』と『ザ・ファイナル』は独立した作品で、最近よくあるあざとい前後編ではありません。もちろん、前後編の全部が悪い訳じゃないけど。

■「十日五割」の暴利の闇金、カウカウファイナンス。社長の丑嶋馨(山田孝之)と右腕の柄崎(やべきょうすけ)、ホスト上がりの高田(崎本大海)。そしてカウカウの社員ではないが丑嶋の盟友の情報屋・戌亥(綾野剛)。彼らの許に借金を申し込んでくる人たちのエピソードが平行線で進んでいくのが、映画・ドラマの基本フォーマット。

■主なエピソードは二つ。日雇い派遣で食いつなぐ真司(本郷奏多)は、当初胡散臭いと思っていたネット長者・天生翔(浜野謙太)の無料セミナーに参加し、本講座に参加するための費用を親に無心した上でカウカウからも借金して、知り合ったタレント・りな(白石麻衣)を射止めるためネット長者(実際はネズミ講)になるべく奮闘する。

■しかし、天生翔を演じるハマケンの演技が、あの「秒速で一億円稼ぐ男」与沢翼にものすごく寄せてて爆笑。でも、原作単行本の該当の巻に「取材協力:与沢翼」とあるらしいので公認だろう。

■あと一つは、大手メーカーのサラリーマン・加茂(藤森慎吾)は、妻帯者でありながら保険外交員・瑠璃(岸井ゆきの)と浮気しつつ、キャバ嬢・花蓮(筧美和子)に入れあげ、かつ同期のライバル・曽我部(水澤紳吾)の人事評価を改竄しリストラ部屋に送り込むという、藤森の得意キャラ「チャラ男」を遥かに超えたゲス男の役。加茂は曽我部に浮気を知られ恐喝されると思い金銭的な援助をするが、それと自身の遊興費で立ち行かなくなり、カウカウファイナンスを訪れる。

■あとはまあ、それなりの結末になっていくのだけど、ハマケンと藤森慎吾が面白すぎる。ハマケンは結構役者としても(朝ドラや月9などで)活動しているので意外感はないけど、役者として初めて観た藤森慎吾がいい。芸人さんはキャリアがさほどなくても役者として結構ハマるというのは、やはり間の読み方が上手なせいもあるんだろうか。

■毎度の面白さだったんだけど、いつものウシジマくんと比べると若干あっさりだったのは、来月公開の完結編を控えているせいかも。でも、エロとか暴力が嫌いな人以外には満足できる出来じゃないかな。以前にも書いたけど、ヤクザ映画をおおっぴらに作れなくなった現在では、この手の映画はその代替だと思うし。

■映画とは関係ないけど、ドラマの方は深夜枠ということもあるのか、主要キャラクター以外には結構無名の役者さんを使っているというところは、山口雅俊監督はエライと思う。でも映画版では必ず若手女優のエロシーンを入れてくるところは確信犯かな(笑)。


オーバー・フェンス [映画]

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■2016/9/17鑑賞@TOHOシネマズららぽーと横浜。今年99本目の邦画48本目。

■自死を選んだ孤高の小説家・佐藤泰志の小説が原作の、『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』に続く「函館三部作」最終作。原作者が同じということ以外にも共通点があり、プロデューサー、脚本(高田亮)は同じ。監督は作品ごとに異なるが、『海炭市叙景』の熊切和嘉監督、『そこのみにて光輝く』の呉美保監督、そして今作の山下敦弘監督と、全作通じての撮影監督の近藤龍人さんは、みんな大阪芸術大学の卒業生である。『シン・ゴジラ』の庵野秀明総監督もそうなので、「大阪芸大日本映画征服計画」の一環と言われている。ウソです。

■『そこのみにて光輝く』を最初に観て凄いと思ったので、その後『海炭市叙景』をTSUTAYAで借りて見たがこれもまた凄かった。なので今作の公開もまた楽しみにしていた。

■以下毎度のことですが、本編に関係ないヨタ話です。初めて訪問した時から函館という街を好きになったオレは、それから数回訪れている。昨年の初夏に再訪した時に、ふと、四半世紀前の年末年始に会社の先輩後輩と旅行した時に訪れた「杉の子」というバーに行こうと思い立った。雰囲気が良くて酒が安かったので(トリスが100円台)。

■ネットで検索したところ、店は移転して再開しているらしい。恐る恐る行ってみたが、店主はオレより少し上くらいの女性だった。先代の店主が亡くなった後この店を引き継いでいるらしい。当時の(オレの)思い出話や、函館にも蔦屋書店が出来たらしいなどとどうでもいい話をしていたが、そこで店内に置いてあった『オーバー・フェンス』の制作協賛依頼のチラシが目に入った。

■話を聞いてみると、店主も映画好きで、函館でロケされる映画の制作を手伝うなどしているそうで、オレが『そこのみにて光輝く』はすごくいい映画だという話をしたら喜んでくれた。それで必ずこの映画を観ようと1年以上前から思っていたわけです。

■前述の通り、佐藤泰志の同名短編小説が原作。職を失い妻子と別れ、失意のまま故郷・函館に戻ってきた白岩(オダギリジョー)は、職業訓練校の木工科に通いながら失業保険で暮らしていた。授業が終わると弁当と350mmの缶ビールを二缶買って帰るだけの単調な日々。義弟からの家族の食事会の誘いもはぐらかして逃げていた。

■職業訓練校に通う仲間たちも、失業保険の延長のため来ている者、整備科からあぶれた者、年金で暮らしているのに趣味で木工を学ぼうとする老人、行くあてもなく来ている大学中退の男など様々。その中の一人、代島(松田翔太)に誘われキャバクラに行った白岩は、野鳥の真似をする変わった女・聡(蒼井優)と出会うが、彼女は以前白岩が弁当屋の前で見かけた女だった。以前メンタルを壊したことがあるような聡に、白岩は興味を持ちだんだん惹かれてゆく。

■オダギリジョーはもはや屈折した男が当たり役で、公明正大な正義のヒーローなんてもう出来ないだろう。昔は仮面ライダーだったのにね。蒼井優は昨年のドラマ『Dr.倫太郎』に続いてメンヘラの人の役だけど、本人がそうかは別にして非常にハマっている。小賢しい松田翔太、そして思い詰めたような大学中退の男を演じる満島真之介の演技は鬼気迫っている。

■ただ、複数の連作短編が原作の『海炭市叙景』や、長編小説が原作の『そこのみにて光輝く』と比べると、元のシノプシスの量が少なすぎて若干間延びした印象を受けたのも正直なところ。三部作の中では佳品の位置付けかな。

■三部作共通に企画を担当した菅原正博さんという方は、函館で「シネマアイリス」という映画館を経営している人。もともとは函館出身の作家・佐藤泰志の小説を広く知らしめたいということで企画したらしい。そういう意味ではご当地映画のはずなんだけど、撮影監督の近藤龍人さんの撮る画は、観光映画のような画像は丁寧に避けて、美しくかつ退廃的な色を持つ函館を優しくかつ残酷に捉えている。それでもいいから函館に来て欲しい、という、おためごかしではない強い意志を感じる。

■近藤龍人さんって、今の邦画の撮影監督ではトップの一人かと。気になった人は「近藤龍人」でググってみてください。どれだけすごい作品を撮っているかが分かります。

■この映画での映像も、オレが昨年行ったときも、まだ函館(新函館北斗)まで北海道新幹線が開通する前の話。開通後どう変わったか、というのを確かめてみたくもある。

怒り [映画]

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■2016/9/17鑑賞@TOHOシネマズららぽーと横浜。今年98本目の邦画47本目。

■李相日監督の映画は好きで、『69〜sixty nine』や『フラガール』、『悪人』は劇場で観た。『許されざる者』はタイミングが合わずWOWOWで見たのだけど、面白かった。

■一方、原作の吉田修一の小説もかなり好きだ。昔は純文学系で芥川賞作家でもあるのだけど、最近の作品はややミステリ系に傾斜していると思う。吉田さんの小説は映像との親和性が高いせいか、かなりの作品が映像化(映画・ドラマ)されているが、ほとんどハズレがない。『悪人』『横道世之介』『さよなら渓谷』などなど。唯一の大ハズレは、フジのプロデューサーが換骨奪胎のような脚色をしてしまったクソドラマ『東京湾景』だけ。

■そんな吉田修一と李相日監督が『悪人』以来にタッグを組んだのが今作です。そりゃ観るでしょ。公開日が待ち遠しかったのは久しぶり。今年は邦画豊作の年だとは思うけど、あまり期待していなかった作品にビックリ、というのが多かったので。

■千葉の漁港の漁師・洋平(渡辺謙)は、三ヶ月前に家出して歌舞伎町の風俗店で働いていた娘・愛子(宮崎あおい)を見つけて千葉に連れ戻す。愛子の不在時に漁港で働き始めた男・田代(松山ケンイチ)を愛子は気にし始める。

■東京のエリートサラリーマン・優馬(妻夫木聡)はゲイ。ハッテン場で知り合った男・直人(綾野剛)を家に呼び、なんとなく暮らし始める。

■泉(広瀬すず)は母の都合で沖縄の離島に越してくるが、あまり馴染めていない。同級生の辰也(佐久本宝)にボートで連れて行ってもらった無人島で、一人暮らす男・田中(森山未來)と知り合い、時々島を訪れるようになる。

■同時期にテレビで、一年前に起こった八王子の夫婦殺人事件の犯人とされる山神一也のモンタージュ写真が公開される。整形して逃走しているようだが、その写真は田代・直人・田中のそれぞれに似ているようにも見えた。千葉・東京・沖縄で、彼らの周りの人々に動揺が広がる。

■このへんまでは事前に公開されているので、まあいいでしょ。ただしミステリなので、これ以降については書きません。オレは勇み足で鑑賞前についうっかり原作小説を読んでしまったのだけど、未読の人はぜひそのまま映画を観てください。上下巻の長編小説なので、エピソードを端折っているところはもちろんあるが、それは映画を観た後で確認していただきたい。小説も傑作です。以降は、俳優陣の演技と李監督の演出について書きます。

■渡辺謙は世界的俳優ということは言うまでもないけど、不安にかられる情けない漁師の役が妙にピッタリで、これは謙さんの演技力のたまものでしょう。他にも若手を含め芸達者の役者揃いで、妻夫木聡と綾野剛は本当に愛し合っているゲイに見えるし、松ケンも森山未來も言うことなし。洋平の姪・明日香役の池脇千鶴は出番は多くないがドハマりだし、捜査する刑事のピエール瀧と三浦貴大もいい。

■凄まじいのは宮崎あおい。何らかの知的障害を持つような描写なのだけど、自分の感情を上手にコントロールできないという演技に鬼気迫るものがあった。よくこんな役受けたなと思うけど、これは宮崎あおいの代表作のひとつになると思う。

■広瀬すずは、当たり前だけど他の役者陣とはキャリアが違いすぎるしどうしても劣ってしまう。滑舌の悪さも相変わらずだ。その広瀬すずに対し、スパルタで知られる李監督は、クランクイン時の最初のカットで50テイクテストをして、その間カメラは一回も廻さなかったそうだ(参照記事)。『悪人』では柄本明や樹木希林などの大御所俳優も音を上げそうになったという話もあったくらいのスパルタ監督だしね。広瀬はオーディションを受けたことを後悔し、いざとなれば(撮影のために取った)小型船舶免許で逃げてしまおうかと思ったとか。

■でもその結果の熱演もあり、非常にキツいシーンも含めてここ最近の広瀬すずの映画での使い方としては最高の効果だったと思う。本人はイヤかもしれないけど、厳しい監督にもっと鍛えてもらったほうが伸びるかなとも。

■でも若手で一番凄いと思ったのは、泉の同級生・辰也役の佐久本宝くん。彼もオーディションで選ばれたらしいけど、非常に重要な役だし、その演技に度肝を抜かれました、マジで。

■2時間20分強という尺の長い映画だけど、ゆるみなく進みまったく飽きさせない。熱量の高い映画だし、混沌とした現代日本の切り抜きでもあるので超お薦めです。たくさんの人に観て欲しいが、オレが行った初日は目視で7割程度の入り。妻夫木や松ケンなどの若手人気俳優や、アイドル的な人気の広瀬すずも出ているので、ダマされた若い人(すいません)がもっといるかなと思ったけど、観客の大部分はオレよりもさらに年配の方だった。たぶん謙さんが主演だから感動作とかと勘違いして来た人も結構いるのでは。でもこの映画を観て感じて欲しい層は20〜40代だと思うので、これは東宝さんの宣伝ミスかなとも。

■観ないと人生の数時間を損する映画だと思うので是非。オレなんかまだ9月なのに今年の邦画ベスト5はほぼ固まってしまったという感じです。

■あと書き損ねてたけど、坂本龍一の劇伴が最高。個人的には『レヴェナント』よりもいい。

セルフレス 覚醒した記憶 [映画]

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■2016/9/11鑑賞@TOHOシネマズシャンテ。今年97本目の洋画51本目。

■『シン・ゴジラ』を観に久々に有楽町まで来た(このエントリ参照)ので、近場でもう1本くらい観ていくかと思ったのだけど、前回『ニュースの真相』でフラれたこちらの映画館でのリベンジを思い立った。ここも2018年に閉館することだし。で新作を観ようと思って選んだのがこちらの映画。別に『デッドプール』の主演のライアン・レイノルズが気に入って、今回も主演だからと観に来た訳ではまったくございません。

■「NYを創った男」と言われるほどのカリスマ建築家・ダミアン(ベン・キングズレー)。しかし彼はガンに侵され余命半年の命だった。しかし生きることに未練があるダミアンは、「フェニックス」という怪しげな研究組織のオルブライト(マシュー・グード)から、遺伝子操作で作り上げた肉体への意識の移植を持ちかけられる。それに応じたダミアンは、見知らぬ男(ライアン・レイノルズ)として目覚める。同調に苦労するダミアンだが徐々に慣れていく。しかしある時、オルブライトから「1日1回必ず飲むように」と言われていた薬を飲み忘れた際に、未知の記憶がダミアンを襲う。実はダミアンの肉体は、新たな身体ではなく、マークという元傭兵の身体だった。それに気付いたダミアンはオルブライトから追われることになる。

■傭兵の肉体に最高の知能が備わった最終兵器、みたいな宣伝文句だけど、それもちょっとズレてるし、意識の移植という最初の設定がSFとしてはかなり雑です。ストーリー展開も行き当たりばったりだし。

■でも、雑なSFファンのオレには結構好みかも。ダミアンの不仲の娘・クレア(ミシェル・ドッカリー)や、マークの妻マデリーン(ナタリー・マルティネス)とその娘に注ぐ愛情はちょっと泣ける。

■結末はさすがに伏せますが、人には薦められないけどちょっといい映画、って感じですかね。さすがに邦題はネタバレ過ぎだと思うけど。


『シン・ゴジラ』と日劇 [映画]

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『シン・ゴジラ』の劇場での見納め(6回目:笑)として、どの映画館がいいかと思案していたが、日劇凱旋という話を知り、超久々に有楽町マリオンの上、TOHOシネマズ日劇で観ることにした。日劇のシアター1(NICHIGEKI-1)は現時点で日本最大の客席数を誇る映画館です。『シン・ゴジラ』の感想についてもっと書き足したいことはあるのですが、冗長かつ重複するので、以前のエントリをご参照ください。

■1984年にできた有楽町マリオン。首都圏在住で知らない方はまずいないだろうが、有楽町駅前の一等地に建つシンメトリーなようで微妙に違うビル。その時はオレは東京には住んでいなかったが、翌年は就職活動で時折東京に来た時にこのビルを眺めていた。関係ない話だけど、当時は就職活動で住んでいた仙台から東京に来るたびに、大概の企業は交通費をくれたのだ。当然、面接日程が隣接していた時には交通費二重取りだったりして、それでスーツ代に充てたりとかという非常にセコいことをしていたのでした。

■閑話休題。そのマリオンの9階(と11階)に日劇と、向かい側には丸の内ピカデリーと二つの映画館が作られた。それ以外の階は西武百貨店と阪急百貨店。西武は撤退して今はルミネに変わってます。

■90年代はまだシネコンも普及しておらず、大箱の映画館が旗艦館となる時代だったので、目玉の作品は日劇でほぼ上映されていた。今回の『シン・ゴジラ』の「日劇凱旋」も、当時はゴジラの新作が上映されていたのを踏まえてのものだろう。その当時は今ほど頻繁に映画を観てはいなかったオレですが、デート利用がほとんどだったので時折日劇に行きました。まあ薄々、映画はデートに向いてない、とは思っていたのだけど。

■当時の日劇は全席自由席だったので、人気映画で席を確保しようとすると早めに並ぶしかない。一人なら適当でいいのだけど、デートで席がないとなるとアレなので、誘った相手と1時間半くらい前に待ち合わせしたりして。そして受付まで階段を含めた長蛇の列に並んでいたのは、今考えるとウソのような話。まあ、それはそれで楽しかったけど。

■でも現在はシネコン全盛なので、人気作が必ず日劇(現:TOHOシネマズ日劇)で掛かる訳ではない。座席数は946と現在の日本の映画館では最大なんだけど、スクリーンが最大ではなくなっている。設備が老朽化している訳ですね。3DはあるけどIMAXや、最新の音響設備もない。

■そしてこの周辺の景観も変わりつつある。阪急百貨店のビルは壊され、いつの間にか東急プラザになっているし、ソニービルも近々リフォーム予定とか。まあ、時代の流れなんだろうけどね。

■大箱はその使命を終えたということなんだろうか。日比谷地区に建設中のビルにできる「TOHOシネマズ日比谷」の2018年のオープンに伴い。日劇とTOHOシネマズシャンテは閉館になるそうです。確かに現在の鑑賞スタイルに一番合うのは、ミニシアター系を除いてやっぱりシネコンだし、時代の流れで仕方がないのかも。おっさんのボヤキですね。

■でも、できれば今後作られるシネコンは、可能であれば大箱+中小規模のシアターという形態にしてもらえないだろうか。ほぼ満員の大箱で『シン・ゴジラ』を観て興奮したのは、やはり貴重で幸福な体験だったのです。

スーサイド・スクワッド [映画]

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■2016/9/10鑑賞@チネチッタ。今年96本目の洋画50本目。

『マン・オブ・スティール』と今春公開の『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』に続いての「DCエクステンデッド・ユニバース」の第三作のようです。「DCエクステンデッド」というのは、同じくアメコミの版元であるマーベルの「マーベル・シネマティック・ユニバース」に対抗する、自社コミックの世界をクロスオーバーさせたシリーズのようですが、DCは一作目・二作目を観たところあまりうまく行っているとは思えない。さて、今作はどうですかね。

■なので時間軸としては『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』の後。スーパーマンの死後(本当に死んだかどうかは怪しいが)、アメリカと利益を相反する第二のスーパーマンに備えるべく、政府高官のアマンダ(ヴィオラ・デイヴィス)は、服役中の悪党を集めて特殊部隊「タスクフォースX」(通称「スーサイド・スクワッド」)を結成することを思い立つ。メンバーはジョーカー(ジャレッド・レト)の恋人ハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)や、百発百中の狙撃手デッドショット(ウィル・スミス)などの名うての悪党ばかり。アマンダは彼らを統率するために、伝説の魔女・エンチャントレスが憑依したムーン博士(カーラ・デルヴィーニュ)を使おうとしたが、そこに誤算が生じた。

■悪を使って悪を退治、というのは昔の漫画『ワイルド7』みたいだけど(古)、予告編や宣伝では、悪党どもが織り成すクレイジーでファンキーなお話、という印象だったのだけど、本編はそんな痛快なところはあまりない。このシリーズ全体に言えるけど、脚本の整合性があまりないし、やや消化不足な結末。ジョーカーとデッドショット以外、あまり馴染みのある悪党(ヴィラン)も少ないし。あ、でもバットマン(ベン・アフレック)も出てますよ。

■クリストファー・ノーラン監督の新バットマン三部作(『バットマン ビギンズ』『ダークナイト』『ダークナイト ライジング』)の輝きはいったいどこへ行ってしまったのか。特にジョーカー。今作のジャレッド・レトも頑張っているけれど、『ダークナイト』でジョーカーを演じるヒース・レジャーは永遠に超えられないかもと。そういう意味ではよくこの役受けたなとは思うけど。

■「DCエクステンデッド・ユニバース」シリーズの先が思いやられる出来でございました。尾木ママを使ったTVCMもなんだかな、という感じだし。ただ、「カタナ」を演じた日系アメリカ人女優の福原かれんさんは、初見だけどなかなか面白そうな方でした。

超高速!参勤交代 リターンズ [映画]

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■2016/9/10鑑賞@TOHOシネマズ川崎。今年95本目の邦画46本目。

■2014年公開の『超高速!参勤交代』の続編。前作は劇場では観なかったのだけど、WOWOWで見たらかなり面白かったので、今回は劇場で観ることにした。そんな人はいないとは思うけど、この映画は前作を観てないとチンプンカンプンなので、レンタルビデオや動画配信とかで押さえておきましょう。

■江戸時代、現在のいわき市あたりにあった貧乏弱小藩・湯長谷藩。老中・松平信祝(陣内孝則)は湯長谷藩にある金山を我が物にしようと企み、無茶な短期間の参勤交代を命じて藩の取り潰しを狙う。藩主・内藤政醇(佐々木蔵之介)率いる藩士たちは、奇想天外な策を繰り広げそれをやり遂げ、信祝の悪行がバレて蟄居を命じられる。ここまでが前作の話。

■それから一ヶ月、参勤交代の「交代」で湯長谷藩に戻る途中、政醇と前作で知り合った遊女・お咲(深田恭子)の祝言を牛久で行っていると、湯長谷藩で一揆が起きたという報せ。幕府の役人の確認前に参勤時の倍速で戻らなければならないという無理難題が政醇たちに突きつけられる。これもまた、恩赦で蟄居を解かれた信祝の差し金だった。

■またまた奇想天外な策を駆使する藩士たちには笑わせられる。基本コメディなんだけど、さすが松竹というべきか殺陣のシーンもふんだんに盛り込まれていて、非常にバランスのいい時代劇になっている。細かくツッコむと、湯長谷藩士たちが、藩主の政醇も含めて超人的に強すぎるとかの疑念もあるけど、そんなところにはこだわらないのが楽しむコツかなとも。万人受けする出来だと思う。

■時代劇なので観客は毎日1100円で観れる年代の方が多かったけど、観て損はない映画だと思います。たまたま封切り翌日の『真田丸』が関ヶ原の戦いの回だったのだけど、合戦シーンを全く描写しないという驚きの展開だったので、ネットニュースで「超高速関ヶ原」とかの見出しが出ていて、図らずも宣伝になってるな、と笑ってしまった。

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